視覚トリックの有効活用2
前回に引き続き視覚トリックについて、
まず視覚トリックの例をいくつか挙げてみます。
①ミュラー.リヤー錯視図
Aの軸線のほうがBの軸線より長く見えるというもの。
② 下記図は明度による錯覚です。
正方形なのですが、Aの図形では暗い部分は明るい部分より縮小して見えるため、正方形の下辺が狭くなって見えます。Bは左側が広く見えます
③ エドワード・エーデルソン
この錯視図形を作ったのは、マサチューセッツ工科大学のエドワード・エーデルソン教授。
どう見てもAのマスはBのマスよりも暗く見えますよね?
ところが実際は同じ色なんです。
彼によるとAのマスとBのマスが違う色に見えてしまう理由は主に2つあるといいます。
1,Bのマスの周りが、より暗い色のマスで囲まれていることで周囲にあるマスと比較すると明るく見えてしまうのだそうです。
2,影の部分がぼやけているため、「影の中にあるぞ」と脳が認識し。その結果、この錯視図では影に惑わされ、影の中にあるマスの色を正しく決定することができなくなってしまうといいます。
④イギリスの心理学者、リチャード・ワイズマンによる遠近方のトリックを使った面白い動画です。
これは物の大きさや遠近感に関して、人間が持っている知識や経験を逆手に取ったトリック動画として制作されたものだそうです。 私達の脳は既知の物事に対しては、経験をもとに
「こうあるはずだ」と
都合の良いように認識してしまうのもだそうです。
私達の視覚というのは本当にだまされやすいものなんですね。
上述の例で空間に応用できそうなポイントをまとめると
①長さは視線の止まる所までを含んで認識される。
②明るさは「膨張」。暗さは「収縮」。
③色の認知は周囲との関係性や比較によって変化する。
④物の大きさによって遠近が定義される。
お堅い説明の仕方だとこうなりますが・・・
さて、ではこれを有効活用してどのように空間に活かしていくかになりますが
①②③④の効果を使って具体例をあげてみますね。
①、視線の止まる場所を考える
●窓やカーテンの高さによる視線誘導 縦方向の長さの錯覚によって空間の天井高が高く見えます。 扉の高さ、窓の高さについても同じ事が言えます。
ただ、新築でない限り、窓の大きさを変える事はなかなか難しいかと思いますので、まずは手軽なところでカーテンから是非試して見て下さい。
●角度による視線誘導
同じ大きさの物でも配置角度を変えることで視線が誘われるポイントが変わってきます。左の図は視線がAの方向で止まるので、壁面の奥行き感は感じにくいレイアウトですが、止まって欲しい場所にレジや受付カウンターを設置する事で誘導効果が得られます。右の図はBの方向に視線が流れるので左の図よりも奥行きを感じられる空間になります。狭い空間や左右や後方への誘導に効果的です。
店舗など商業空間に有効です。
●鏡による視線誘導
一目瞭然ですが、鏡に写りこませることで、実際よりも深い奥行きに見せています。
出典:https://www.pinterest.jp
2、明るさの演出ー照明
②の明るさによる錯覚。光の明るさを使うと効果的です。
出典: www.aqura.co.jp
出典:http://www.flame-product.com
壁面を照らすことで反射光によって壁が明るく見え、実際の大きさよりも広がりを感じます。
間接照明は奥行き感を出す効果もあるので、メリハリが付き、空間をより立体的に演出することが出来ます。
新築やリフォームなどであらかじめ間接照明を設計される場合、天井や壁面、フットライトなどで空間の奥行き感を出すのはオススメです。
賃貸や模様替えなどではフロアライトやスタンドライトなど置き式の照明でも手軽に雰囲気を変えることが出来ます
●色味
下記は色味によって起こる錯覚。左は後退色、右は進出色。全体を明るく広く見せたい場合は進出(膨張)色の組み合わせ。メリハリを作って奥行きを出したい場合は後退色と進出色の組み合わせをする、など得られる効果が違います。壁面のアクセントカラーとして取り入れても良いですね。
3、隣り合う色の組み合わせを工夫する
③の例では家具や壁、床の色、隣り合うものとの色の組み合わせによって実際の色味よりも明るく見えたり、暗く見えたり、という錯覚が起ることが分かりました。
この錯覚を活用すると、例えば同じカラーの家具を購入して、配置によって目立たせたくないものはコントラストを少なくして後退させ キッチン雑貨や電化製品はダーク系の色でまとめ、後退させて見せ、
目立たせたいお気に入りの家具などはコントラストを活かしたものの近くに配置するなど 色のソーニングをしてメリハリを付けてみるのも良いですね。
写真の例は「ダークグレーの壁に白い椅子」、「白の壁に黒の椅子」と最もコントラストのある組み合わせです。お互いが反発し合って目立ちます。
4、家具の大きさや形を工夫する
④のリチャード・ワイズマンの動画でも分かるように物の大きさにより人の目は簡単に錯覚を起こします。遠近法の強調によってより広く見える空間にするには設置物の大きさや形に工夫が必要です。
背の低い家具を置く。例えば入り口から一番遠い壁面に背もたれの高い椅子と低い椅子があった場合、背の低い椅子の方がゆとりある空間に見えます。
背の高い家具を置かざるを得ない場合、色味で工夫する。
以上視覚トリックの有効活用4項目でした。
例に挙げるイラストは分かりやすいようにシンプルにしてありますが、実際の空間は条件も様々でもっと複雑です。基本の項目を押さえながら効果をイメージして活用することで空間の居心地が全く変わってきます。是非役立てて見て下さい。